韓国籍の被相続人の相続放棄 親子関係の証明の工夫により相続放棄受理を実現

ご依頼者からは,以下のような相談がありました。

「韓国籍の父が亡くなりました。私が幼い頃に家を出て以降,長い間疎遠になっていましたが,多額の借金を抱えていたとの噂を聞いたため,相続放棄をすることにしました。私は韓国籍なので,相続放棄のためには,韓国における戸籍にあたる家族関係登録簿とその翻訳が必要と聞きましたが,日本で生まれた父は,領事館に届け出をしていなかったため,父や私に関する登録がないとのことでした。どのように相続放棄を申し立てればよいでしょうか。」

 

相続放棄の申立ての手続自体は非常にシンプルですが,本件のように,日本で生まれた在日コリアンの方々の場合は,本国において,日本の戸籍にあたる家族関係の登録がなされていない場合がよくあります。本件では,ご依頼者から,関連しそうな資料についてすべて提出を受けたところ,出生届済証明の中に,ご依頼者と被相続人との関係を示す記載があったため,当該資料を裁判所に提出することで,何とか親子関係の証明を行い,相続放棄を受理してもらうことができました。

また,今回は,被相続人が韓国籍であったため,韓国法が適用されるところ(法の適用に関する通則法36条),韓国では,日本と異なり,第1順位の相続人が「被相続人の子」ではなく,「被相続人の直系卑属」とされています(韓国民法1001条1項1号)。そのため,被相続人の子全員が相続放棄をした場合,その孫が相続人となるので,その孫も相続放棄をする必要があります。この点を理解していたため,ご依頼者のお子様についても,合わせて相続放棄を実施することができました。

 

このように,韓国籍の被相続人の方の相続,相続放棄の場合は,韓国法が適用され,日本法とは異なる対応が必要となりますので,対応にお困りの際は,ぜひご相談いただければと存じます。

2018.03.23玄政和